●本人訴訟か代理人訴訟か

  裁判は弁護士に依頼して起こすこともできますが、成人であれば原則として一人で起こすこともできます。ですから必ずしも弁護士に依頼しなければならないというものではなく、自分一人でやるという手もあるのです。

 では、弁護士に依頼して起こす場合(代理人訴訟)と自分一人で起こす場合(本人訴訟)とどちらがいいでしょうか。

 まず弁護士に依頼して起こす場合のメリットを考えてみましょう。

 一番大きいのは手続きをすべてやってくれるということでしょう。裁判を経験したことがない人にとって、裁判の制度は難しいものです。多くの書類を提出しなければなりませんし、期日には出頭しなければなりません。そのすべてを代わりにやってくれるのですから、まさに救世主といえます。

 弁護士に代理人になってもらうメリットはそれだけではありません。弁護士は法的知識を有しているがゆえに有利に戦えるようアドバイスしてくれます。裁判は正義が勝つとはかぎらず、技術の優れたほうが勝つ場合もありますから、一定の法的知識が保証されている弁護士に相談できることは、それだけでも精神的に楽になれます。
 
 では、本人訴訟のメリットは何でしょうか。

 一番大きいのは弁護士費用が不要になるため安上がりだということでしょう。大まかな目安として請求額の1%ていどですみます。たとえば請求額が200万円の場合は2万円ていどですむということです。それだけ払っておけば、1年2年と裁判が長引いたとしても、追加でかかるものはほとんどありません。

 本人訴訟にはもう一つ大きなメリットがあります。それは本人が納得できるまでできるということです。弁護士はクライアントの利益をはかってはくれますが、所詮は他人です。できれば一日でも早く終わらせて報酬を得たいと考えいる弁護士がほとんどでしょう。ですからほとんどの弁護士は早く和解させようとして、和解のメリットを強調しすぎるきらいがあるのです。その結果、弁護士に対して気を使って、本当は納得していないのに和解してあげなければならないという雰囲気になってしまいかねないのです。その点、本人訴訟だと納得できるまでできるので、どのような結果になろうと不満が残りにくいのです。

 本人訴訟がいいか代理人訴訟がいいかはケースによるとは思いますが、ある程度の法的知識がある人であれば、本人訴訟のほうが安上がりだし、どういう結果になろうと不満は残りにくいので、私なら本人訴訟をおすすめしたいところです。もっとも請求額が高額な場合や専門性の高いものは弁護士に代理人になってもらったほうがいいでしょうけれど。

 本人訴訟を考えている人は次の書籍を読んでおくといいでしょう。実は私もこの本を頼りに本人訴訟をしたことがありますが、大いに役に立ってくれました。