●色眼鏡を外して人を見る

 人間を見るとき、色眼鏡を通して見ると、人柄を見誤る可能性が高くなります。 

 財産にしろ、肩書きにしろ、学歴にしろ、地位にしろ、その人間の一部を象徴するものでしかなく、そういった「外的なもの」では、人柄が善いか否かは判断できません。

 イチロー選手も、以前、「プロ野球界には偉大な記録を作った人は多くいるが、人間として尊敬できる人はプロ野球界にはほとんどいない」と述べたことがあります。「偉大な記録を作った」イコール「人間として偉大」というわけではないということです。
 
 極端な例をあげれば、人柄は最悪であっても、地位も権力もお金も持っているということもあります。
 逆に、いくら人柄が善くても、不遇な状況に甘んじている場合もあります。

 しかし、ほとんど人は、他人を判断する際、その人の人柄を見ようとはせず、その人の「外面的なもの」ばかりに目を向けます。

 「この人は一流大学出身だ」
 「この人は一流企業の社員だ」
 「この人は文学賞受賞作家だ」
 「この人はナンバーワンのセールスマンだ」
 「この人は、有名企業の社長だ」
 
 こういった色眼鏡を通して見れば見るほど、相手の人柄の善し悪しは判断しにくくなります。いきおい、人を見誤ります。

 では、どうすれば相手の人柄を見抜けるようになるでしょうか。

 色眼鏡を外して、その人が日頃やっていることをじっくり観察することです。

 「時間管理の達人」というベストセラーを出している人であっても、実際は時間にルーズであれば、その人は「時間管理の達人」ではありません。

 「家庭教育」に関する講演家として有名であっても、その人の子供たちが非行に走れば、「家庭教育」に関してはプロとは言えません。
 
 いかに一流大学を出ていたとしても、専門分野の知識が身に付いておらず、他人に質問されても何も答えられないようでは、学識のある人とは言えません。

 色眼鏡をかけて人を判断すればするほど、人を見誤るということを覚えておきましょう。
 
 「外的なもの」は、あくまで参考になるだけです。しかも、参考といっても、たいして参考にならない場合がほとんどです。

 そのようなたいして参考にならないものを拠り所とするよりも、もっとも大切なこと、つまり、その人が日頃どのような行動をしているかをしっかりと観察しましょう。
 
 それができるようになれば、人を見誤ることも少なくなるでしょう。