●誘惑の原因から物理的に離れる

 「分かっているのにやめられない」
 「分かっているのについついやってしまう」
 
 こういった状態を無抑制と言いますが、この無抑制の原因は「性急さ」と「性格の弱さ」の二つがあります。

 「性急さ」とは、感情に支配されている状態です。
 カッとなって何も考えずに暴力をふるった、暴言を吐いた…というのがその格好の例でしょう。感情に支配されているから、やってはならないことをついついやってしまうのです。

 一方、「性格の弱さ」とは、欲望に支配されている状態のことを言います。
 身体に悪いことは分かっていながら、深夜についつい夜食を食べてしまう、医者から飲酒を禁止されているのについついお酒に手が出てしまう…というのがその例です。
 
 あるいは、ダラダラとテレビを見続けるときではないことが分かっていながら、ついつい何時間もダラダラとテレビを見てしまったというのも、「性格の弱さ」の例と言えるでしょう。

 では、欲望に振り回されないようにするにはどうすればいいでしょうか。
 
 方法はいくつかありますが、一番手っ取り早いのは、欲望の対象から物理的な距離を置くことです。

 深夜に食べ物に手が出てしまうのなら、食べ物を必要以上に買い置きしておかないことです。
 お酒に手が出てしまうのなら、とにかく家にお酒をおかないことです。
 家に帰るとどうしてもテレビにスイッチを入れてしまって、そのままダラダラとテレビを見てしまう人なら、喫茶店で仕事をしましょう。あるいは、いっそのことテレビを捨ててしまってもいいかもしれません。

 欲望の対象があるからこそ、欲望がかき回され、がまんができなくなるのです。
 ですから、欲望に弱い人なら、欲望の対象から物理的に距離を置いておくことです。
 そうすれば、欲望が湧きにくくなります。
 仮に欲望が湧いてきても、欲望を満たしてくれるものが手元になければ、がまんする以外になくなるのです。