●打ち込めるものを探す

 会社員として働くことは、けっして楽なことばかりではありません。社員としての責任を果たさなければならないし、気苦労も絶えないでしょう。

 だからからか、よく、こんなことをいう会社員の人を見かけます。

 「老後は何もせずにのんびりと暮らしたい」

 あたかも「何もしないこと」イコール「幸せ」だと思っているかのようです。

 しかし、何もせずにのんびりと暮らしても、けっして「真の幸せ」はつかめません。

 それはただ単に「苦労がない」というだけのこと。

 彼らの楽しみといえば、せいぜいテレビを見たり、おいしい料理を食べたり、という程度のことでしょう。

 「それが幸せなのだ」と言ってしまえばそれまでですが、それは人間の「真の幸せ」とは別のものです。

 「苦労がない」ことに最初こそは喜んでも、やがて退屈という別の苦痛を感じ始めることになるでしょう。

 アリストテレスは「真の幸福は卓越性に即した活動を行うことの中にある」と説きました。
 私流に言い換えれば、「真の幸福は何か優れたことを行うことによって得られる」ということです。
 
 例えば、歌が好きな人であれば、歌の練習をして大勢の前で歌を歌い、拍手喝采されるほど嬉しいことはないでしょう。
 絵を描くのが好きな人であれば、絵を描くことに喜びを感じるでしょう。
 書道がやりたければ、書道教室に通って作品を作り上げることは大きな楽しみになるでしょう。
 何でもいいのです。好きなことをして、その芸を磨くのです。そのときに得られるのが人間としての「真の幸福」なのです。

 「老後は何もせずにのんびり暮らしたい」と思っている人は、今のうちから、「私はこれに打ち込みたいのだ」というものを見つけておくことです。そうすれば「何もせずにのんびりと暮らす」よりも、何倍も幸福な人生を送ることができるでしょう。