「裁判所で話し合いましょうか?」

  諾成契約というのは申し込みと承諾が合致した時点で成立します。出版契約も諾成契約の一つです。

 ですから、単なる口約束でも立派に契約は成立するのです。

「ウチからこの本の訳書を出そうと思っているのですが、翻訳してもらえませんか?」
「はい、いいですよ」
 という口約束だけでも、出版契約は成立したといえるわけですね。

 もっとも、話した内容がこれだけでは、後に出版社の都合で本が出版できなくなったときに、出版社側は「もともと出版契約なんか結んでいなかった」って突っぱねるでしょう。というのも、証拠が残っていないのですから、言いたいように言うわけです。

 ですから、出版契約を結んだというためには、もっと具体的に、印税率、初版部数、定価なども、おおよそのことでいいので聞き出しておくといいでしょう。

 出版社にとっては出版契約書というのは都合の悪いものなのです。もし都合が悪くなって出版できないという事態になったとき、責任を負わされることになる恐ろしい紙なのですね。

 ですから、誠実ではない出版社は、ああだこうだといって出版契約書を出したがりません。

 私の経験からいって、大手であろうが、出さないものです。
「ウチは、いちいちそういうのってやってないんですよね」とか、
「まぁ、信頼関係でやっていきましょうや」
 なんていって、うやむやにされることが多いのです。
 
 でも、それで諦めてはいけません。

 出版契約書を出してもられないければ、粘る。粘ってもダメな場合は、メールでもなんでもいいので、話した内容が証拠として残しておく。これが鉄則です。

 今はメールでのやりとりも多くなったので、メールで条件を聞き出しておくのが一番でしょう。

 ところがせっかくそうやって証拠を作っておいても、出版直前になってから印税率を引き下げようとする出版社おあるのです。

「印税を6%と約束していたけれど、6%にすると、本の定価がどうしても高くなってしまう。安い本にしようと思えば、どうしても印税を4%にしなければならない。印税率が下がっても、本の定価がやすくなって、たくさん売れれば、結局はたくさんの印税が入ることになります。どうか理解していただけませんか?」
 
 こんな無茶なことを言ってくるわけです。もともと6%という印税率がかなりの譲歩をしているのに、さらに下げられたらたまったものではありません。

 こういう場合は、「裁判所で調停という形で話し合いませんか?」とでも言って調停での話し合いを提案してみるのもいいでしょう。

 たいていの出版社は、自分たちが無茶なことを言っていることを自覚していますから、「分かりました、最初の約束どおりにします」と言ってくれると思います。

 まとめていえば、(1)必ず証拠を残しておくこと、(2)無茶なことを言われたら、調停での話し合いを提案してみること、の2つが重要です。

 この2つができれば、そうそう出版社のいいなりにならなくてもすむと思いますね。