英語以外の外国語を学ぶ意義

 「ヨーロッパ言語共通参照枠 利用者の手引き」に次のように書かれています。

 自分が現在生活しているところの文化や育ったところの文化しか知らない人は、自分のやり方が普通であり、自分のやり方と違っていると普通ではないとみなしがちである。

 
 筆者はイギリス留学時代に多くのイギリス人と接して、いかにイギリス人の多くが「自分のやり方が普通であり、自分のやり方と違っていると普通でない」とみなしているかを肌で感じていました。もともと日本の文化を理解としているわけではない彼らの目には、私が紹介する日本文化は「おかしい」と映ったのでしょう。

 しかし彼らのように異文化と接したときにいつも異文化を否定するような態度を取っていては相互理解につながることはないでしょう。逆に、異文化を理解し尊重できるようになれば、相互理解につながるものと思います。そしてそれは理解される側だけでなく理解するほうにとっても大きな成長の機会だといえます。

 では、異文化を理解し尊重できるようになるには何が必要でしょうか。

 今や多くの大学で世界の多文化を理解するためねの授業が行われています。こうした授業を通して世界の多文化を理解することも重要でしょう。あるいは、独学であっても書物を通して世界の多文化理解に努めることもできます。

 しかし文化と言語は密接に結びついているので、文化を知ることと同時に言語をも学ぶことも重要だと筆者は考えます。実際、言語を学べば、その言語を使用する文化にも興味が湧いてくるでしょう。筆者は英語以外にドイツ語やフランス語を学習していますが、筆者の経験からいっても、知らず知らずのうちにドイツ語を学んでいるとドイツ語圏の文化に、フランス語を学んでいるとフランス語圏の文化に興味が湧いてきます。こうした異文化に対する興味が異文化理解の土台となるのです。

 では本題に入りましょう。英語以外の外国語を学ぶ意義とは何でしょうか。英語だけでは駄目なのでしょうか。

 もちろん英語だけでは駄目ということはありません。英語は今や世界語ですから学ぶメリットは大きいですし、現実問題として何か国語もマスターするのは困難です。

 しかし英語一辺倒で勉強していると英米至上主義的な見方に偏る危険性があるのは否めません。そういう意味では、より多くの異文化を理解し尊重しようと思えば、英語以外の言語にも目を開くことが重要といえます。

 ここで『マルチ言語宣言: なぜ英語以外の外国語を学ぶのか 』からの引用をご紹介しましょう。

「言語と文化は深く結びついている。できるだけ多くの外国語を学習し、他者の文化を理解し、自分の文化を相対化することができれば、それだけ他者の文化的アイデンティティと多様性を尊重できるようになる」

 この一節に英語以外の言語を学ぶ意義が集約されているといってもいいでしょう。