●「アンストッパブル」

 映画の善し悪しを判断する際の一つの基準となるのがリアリティであろう。いくら精巧にできた映画でも、リアリティに欠けてしまうと見ている途中から、「こんなことあるわけがない」と思って見ているのがバカバカしくなることすらある。

 その点、この映画はリアリティという観点では満点である。なにしろ、実話をもとにして制作されている。まさにありそうな話なのである。ありそうな話だが、あってはならない話、あったらどうなるのかという話なのである。

 しかも、スリル満点。この先、いったいどうなるんだろうというハラハラドキドキが最初から最後まで持続する。

 このハラハラドキドキ感は、以前、『スピード』でも味わったことがあるが、『スピード』と同様のハラハラドキドキ感が味わえる。『スピード』に興奮した人は是非この作品もおすすめしたい。

 しかし、この映画を高く評価したくなるのはハラハラドキドキだけではなく、人間にとってなにが一番大切なのかを考えさせてくれる作品でもあるからだ。

 無人の貨物列車が暴走してしまった。その列車には引火性の毒物が大量に積まれており、急カーブの箇所にさしかかったら脱線してしまう。推定被害者数は10万人。その列車を止める方法は後方から列車を連結して逆方向に引っ張るしなかない。しかし成功する可能性は低い。失敗したら間違いなく死ぬ。

 さて、このような状況で実際に自分が死ぬリスクをおかしてまで暴走列車を止めようとするか。それともなにもせずに、しかたがないとあきらめて10万人の市民を見殺しにするか。

 列車が暴走したのが自分の責任ではない場合、だれがいったい自分の命のリスクをおかしてまで列車を止めにでるだろうか。あと数週間で解雇されることが決まっていた退職間近の運転手が会社のためではなく、市民を守るために会社の命令に背いてまで暴走列車を止めにでる。その決断力に身体が震えるほどの感動を与えられる。


ジャンル=実話
お勧め度=★★★★★
個人的評価 95点