翻訳の通信教育で適性を見極める
 
 将来、翻訳の仕事をしてみたいと思っている人には、翻訳の実力をつけるという本来の目的だけでなく、自分の適性を見極めるためにも、一度、翻訳の通信教育をやってみるといいと思います。
 
 私自身も経験があるので、これは声を大にしてお勧めしたいところです。
 
 ただし、通信教育の課程を終えたら、すぐさま翻訳家になれると思ってはいけません。

 実際に、課程を終了してすぐに翻訳家になれる人もごく希にいるかもしれませんが、それはあくまで例外中の例外。ほとんどの人は課程を終了するだけでは翻訳家にはなれませんし、なれたとしても、まだまだ修行が足りませんから、仕事を引き受けててもボロがでやすいでしょう。

 あくまで翻訳の通信教育は実力をつけるための場、自分の適性を見極めるための場と考えましょう。

 では、翻訳の通信教育のどういうところが適性を見極めるのに適しているのでしょうか。
 
 第一に、孤独に耐えられるかのシュミレーションができます。

 翻訳という仕事は徹頭徹尾孤独です。グループで各々が自分の訳す箇所を分担して訳すという仕事のしかたもないわけではないですが、それにしても自分の担当する箇所を訳すときは基本的に自分一人です。

 ましてや一冊の単行本を一人で訳すとなれば、最初から最後まで一人っきりです。その孤独に耐えられるか否かが通信教育をやってみることで多少なりとも疑似体験ができるのです。

 第二に、締め切りに間に合わせられるかのシュミレーションができます。

 締め切りに間に合わせることも仕事をする上で極めて重量な要素ですから、仕事を引き受ける前にシュミレーションしておくのがベターです。

 締め切りに合わせるということは、実際にやってみないことにはなかなか感触がつかめないのですが、いきなり仕事でそれを経験するより、通信教育で疑似体験をしておくといいでしょう。
 
 この2点だけでも、自分が翻訳家に向いているか否かの適性を判断するための良い機会となります。

 何ヶ月か通信教育をやってみて、孤独な作業は自分には合わないとか、作業はできるが締め切りに間に合わせられないとかといったことが二度三度出てくるようなら、翻訳家に向いていないとことが分かります。

 逆に、締め切りに間に合わせつつ課程を最後まで続けることができたら、少なくとも適性はあると考えてもいいでしょう。これが見極められるだけでも通信教育をやってみる価値はあると思います。