印税率を聞くのも一苦労(その2)
 
 
印税率を聞くのに苦労したケースの一つに、K社の例があります。

 多くの場合、翻訳者としてはできるだけ多く貰いたいと思うものでしょうし、出版社としてはできるだけ値切りたいと思っているものでしょう。

 私は、別に、世間相場の範囲内であれば、何パーセントでもいいと思っているのです。もちろん、高ければありがたいとは思いますが、低くても世間相場の範囲内であれば、全然かまわないし、値上げ交渉をしたことなど一度としてありません。

 「世間相場」という言葉自体が曖昧ですが、今の時代であれば、一定の経験のある翻訳者の場合は6%〜8%、新人はそれより2%程度は低くなる場合があると認識しています。もっとも、通常の本の厚さと比べて著しく薄い本の場合は、ベテランの翻訳家であっても、仕事量自体が少ないので、値切られる場合があります。

 つまり、早い話、私の場合なら、6%〜8%の範囲内ならいい、言い換えれば、6%以上ならいいと思っているし、非常に薄い本なら5%というのもありうる、と考えています。

 出版社側も世間相場が6〜8%なのは知っているはずです。しかし、印税率のことを黙ったまま仕事を依頼し、そのまま仕事をさせようとするケースがよくあるのです。

 K社の場合もそうでした。打ち合わせのときに印税率を聞いても、うやむやにされ、正式に仕事として依頼する旨を電話で伝えてきたときも何も言わず、その後もいつまで経っても、印税率のことは言い出しませんでした。

 しかし、こういうのは相手の思うつぼなのです。最後の最後まで仕事をさせておいて、「いや〜、印税率のこと、言うの忘れていたよ。実はウチはね、○%なんだよね」とか言って、都合のいいように収めようとしているのです。

 そういうのはトラブルのもとなので、私はメールで印税率のことを再度聞きました。印税率がハッキリしないうちは仕事を始めませんと書いておきました。

 すると、翌日、電話がかかってきてこう言うのです。

「印税の件だけど、ウチでは、だいたい5%でやってもらっているんだよね」

 私が依頼された本は薄い本ではなかったので、私は6%以上でなければ引き受けるつもりはありませんでした。それで私はこう答えたのです。

「で、私は何パーセントなんですか? 私がお聞きしたいのは、私の印税率が何パーセントか、なのですけれど」

「だから、ウチはね、もう長年、5%でやってもらっているんだよ」

「では、私も5%ということですか?」

「それでは不満ですか?」

「では、私は仕事を受けません。打ち合わせのときから私がずっと印税率について尋ねても一切教えて下さらなかったですよね。私は、てっきり世間相場の範囲内だと思っていましたが、今になってから5%と言われるのなら、仕事は受けられませんね。私は世間相場は6%〜8%だと思っていますから」

 すると相手も怯んだのか、あわてて

「あ、いやいや、6%でもいいと思っているんだ。6%なら受けてもらえるのか?」

「ええ」

 こうして印税率は6%と決まり、すかさず、私は再確認のメールを送り、送り返し確認のメールを送ってもらいました。こうして私は印税率を聞き出すことに成功したのです。

 印税率を聞いてもうやむやにされたまま仕事を始めてはいけません。絶対、聞いておきましょうね。そして、できればちゃんと証拠を残しておきましょう。一番いいのは契約書(または覚書)を出してもらうことです。