●トフルはオーフル

 日本人がロンドン大学遠隔教育に入学するには英語能力を証明しなければなりません。

 しかし、それは(原則として)決められた英語検定で要求される点数を取る以外は認められていません。ですから、「昔、イギリスの大学院で修士号を取った」とか、「子供の頃、アメリカに8年棲んでいた」(ちなみに私のことではありません)などという個人的な事情は考慮されないわけですね。

 かくいう私は、昔、イギリスの大学院で修士号を取得しておりまして、ロンドン大学遠隔教育の入学資格に英語検定が課せられていることを知ったときは、「え? 今さら英語の検定試験を受けなければならないの? イギリスの大学院の修士号に免じて入学させてもらえないかな?」なんて甘いことを考えていたものです。

 でも、認められないものを認めて貰う努力をするより、正々堂々と受けて要求されている点数を取れば話が早いわけです。しかも、その方が何倍も楽…なはず。

 そういうわけで文句を言わず英語検定を受けることにしました。ロンドン大学から認められている英検で日本で受けられるものといえば、TOEFL iBT、IELTS、ケンブリッジ英検、オックスフォード大学英検がありますが、受験のしやすさから言えばTOEFL iBTではないかと思い、早速受けてみました。

 受けてみた感想と言えば…。

 もうカルチャーショックもいいところでした。なにしろ、試験時間は4時間以上にもなるのですが、その間、ずっとパソコンに向かって解答していくわけで、途中から目がチカチカチカチカ。私はパソコンをにらめっこするのは1時間半くらいが限界です。

 しかし、それだけではありません。私が読解の問題を解いている最中に、横の受験生がスピーキング部門に入って英語をしゃべっているのがうるさくて仕方ない。しかもその後、自分もスピーキング部門に入ったのですが、パソコン相手に英語を話すというのが何かしっくり来ません。

 結果は見るも無惨なもので、何度か受けない限りロンドン大学から要求されている点数をクリアすることはないなと自覚しました。

 ところが2回目も3回目もカルチャーショックは治りません。どうも隣の席の人がしゃべっているのが耳に入ってくると集中できないのですね。2回目のときも3回目のときも、受け始めて間もないときに、「ああ、こりゃ今回もダメだ。今すぐ放棄して帰ってやろうか」と思うほどでした。 

 その後私はTOEFL iBTを受けるのを諦め、IELTSに切り替えました。案の定、IELTSでは一発で余裕の合格点が取れ、最初からIELTSにしておけば良かったと思ったのでした。まったくトフルはオーフル(awful)でした。