翻訳会社に再就職した
 
 英会話講師をやめた私は、再就職先を翻訳会社一本に絞りました(英会話講師をやめた理由は長くなるのでここでは省略します)。

 翻訳の仕事としての経験は、英会話講師時代に突発的にもらったレポートの翻訳だけでしたが、一応は翻訳の仕事歴はあることになります。
 
 私はそれをセールスポイントにして、一気に翻訳会社に再就職し、得意の英語力を好きな翻訳で発揮しようと思っていたのでした。

 そこでジャパンタイムズの募集広告の中から必死に翻訳会社を探し、数社あった中でS社に応募しました。英語関連の仕事を探すのは、月曜日のジャパンタイムズの求人広告。それは英会話講師時代の同僚たちとの間では常識となっていました。

 S社は社員50名程度の中堅企業でしたが、私としては、得意な英語力を仕事に生かせる可能性のある職場でしたのでうってつけの企業でした(というより、そう思えました)。

 さっそく応募すると、いきなり社長面接がありました。
中途採用で、しかも1名の募集ということもあり、筆記試験など面倒なものはなく、面接だけでした。
 
 面接の際、しばらくは翻訳そのものの仕事はないこと、しかし将来的には翻訳を任せるとのこと、月給は192000円になることなど口頭で教えてもらいました。

 当時27才の私としては、月給192000円というのは、それほど良くもなければ悪くもないといったところでしょうか。

 しかし、お金を稼がなければ食べていけない私にとっては、文句をいえる立場にはありません。翻訳会社でさえあれば、とりあえずはどんな仕事でもいい、というのが本音でした。

 社長との1対1の面接は2時間にも及びました。なにしろ、履歴書とそれしか採否の決定要素はないのですから、それも当然かもしれません。
 
 数日後、私の留守中にその会社から電話があり、留守番電話に「お仕事をお願いしたい」旨、メッセージが残されていました。

 私が翻訳会社の社員となった瞬間でした。

 すぐには翻訳の仕事をさせてもらえないものの、少なくとも翻訳周辺の仕事ができる。当時の私にとっては大きな前進のように思えました。