●卒論に要する時間と労力

 卒論は時間も労力も相当かかります。生半可な気持ちでは突破できません。これが慶應通信で経験した私の率直な感想です。

 卒論は単位にすればわずか8単位にしかすぎませんが、ほかの科目で単位を取得することと比べれば、単位数の何倍も時間と労力を要します。
 私が経験した感覚でいえば、30ないし40単位分くらいに相当します。卒論として最低限のことだけをして逃げきろうと考えている人(あくまでそういう人がいたとしての仮定の話ですが)でも、20単位分くらいの時間と労力が要るでしょう。

 なぜそれだけの時間と労力を要するのでしょうか。

 まず時間に関してですが、卒論に合格するには、卒論指導を原則として最低3回受けなければなりません。卒論指導は年に2回(春と秋に1回ずつ)しかありませんから、卒論指導から卒業まで最低で1年半の年月をかけなければなりません。

 ですから、ある年の3月に卒業を考えている人であれば、その前々年の秋には第1回目の卒業指導に入っていなければなりません。ということは、さらに逆算すれば、その前々年の夏には卒論指導申し込みをしておかなければならず、前々年の春にはすでにある程度テーマも固まっていなければならないわけです。

 卒論指導は最低で3回受けなければなりませんが、これは3回受ければ卒業できるという意味ではありません。場合によっては4回、5回、6回…とかかってしまうこともあります。指導教授からコメントがもらえるのが原則として卒論指導時に限りますので、半年に1度の卒論指導時に新たに方向転換するようなことがあれば、卒業が長引いてしまうわけです。その間、モチベーションを維持するのにはそれなりにエネルギーがかかります。

 次に労力に関してですが、卒論を書き始める前提として自分一人でテーマを見つけなければならないわけですが、受け身中心の勉強をしてきた人にはこれはきわめて難しいことです。「卒論指導のときに指導教授と話し合いながらテーマを決めよう」と考えている人もいるようですが、指導教授がテーマを決めてくれることはなく、あくまで自分一人で見つけなければなりません。

 テーマが決まったら、そのテーマに関する参考文献を読破していくことになりますが、これがまた相当の労力が要ります。他の科目であれば、参考文献を数冊も読めば十分ですが、卒論の場合は数冊では足りないことは自明で、少なくとも30冊ないし40冊は読まなければならないでしょう。

 しかし、もっとも労力が要るのは執筆作業です。他の科目のレポートとは長さが違いますから、要する労力もその何倍にもなることは言うまでもないでしょう。

 以上のことから私が言いたいことは、卒論は30単位にも40単位にも相当するくらい大変な作業であることを肝に銘じ、心して取りかかるべきだということです。