●試験だけで卒業させてもいいの?

 ロンドン大学遠隔教育の場合、日本国内で試験を受け、それに合格するだけで卒業できる学部も多々あります。
 つまり、日本の大学の通信教育とは大きく異なり、レポートもなければ、スクーリングも卒論もないのです。ただ単に試験に合格するだけで卒業することも実際に可能なのです。
 
 これを知るとほとんどの人はきっと驚くことでしょう。
「え? 試験に合格するだけでいいの? そんなので卒業させてしまっても大丈夫なの? 簡単すぎるんじゃないの? ロンドン大学の名が汚されることはないの?」

 私もこれを知ったときは驚きました。
 というのも、私の母校の一つである慶應義塾大学の通信教育課程は試験のほかに、膨大なレポート、卒論、スクーリングが必修になっていたからです。
 試験も合格するのは簡単ではありませんでしたが、大変だったのは、むしろ試験よりもレポートや卒論でした。
 ですから、本当に試験だけで卒業させてもいいのかって思ったのです。

 しかし、ロンドン大学の遠隔教育は150年以上の歴史があります。
 しかも、英国でもトップの有名大学です。
 けっしていい加減なシステムで金儲けをしようと思っているわけではないはずです。
 過去のいきさつは分かりませんが、きっと色々試行錯誤した結果、行き着いたシステムが今のシステムなのだろうと思います。

 どんないきさつがあったのかは分かりませんが、ロンドン大学側が考えていることは、「レポートにしても卒論にしても、本人が書いたものかが確実に保証されていないので信頼にあたいしない。それならば100%本人確認ができる試験で、長時間の論述をさせ、実力を判定したほうがいい」ということだと思います。
 
 考えてみれば、それも一理あります。
 だって、レポートにしても卒論にしても、いわゆる代筆屋に書かせることだってできるわけですし、あるいは、配偶者なり兄弟なりの身内に書かせることも不可能ではありません。さらに言えば、他人の論文を盗作することだってありえます。
 そう考えれば、100%本人確認できる試験のほうが何倍も信頼性が増すと考えているのでしょう。

 では、スクーリングは必要ないのでしょうか?
 日本の大学では、「出席点」というのが10%ないし40%くらい考慮されることがあります。
 これはこれで学生にとってはありがたいシステムだとは思うのですが、ロンドン大学遠隔教育では、基本的に世界中の誰にでも学位を手にする機会を与えたいという理念で発足していますので、授業を必須にしにくいという事情もあるでしょう。
 
 もう一つは、授業に出さえすればそれだけでいいのか、眠っていても、ぼんやりしていてもいいのか? という点も挙げられると思います。結局、授業に出ていても、何にも吸収しない人もいるわけで、そういうのを「出席点」として下駄を履かせることは合理的ではない、試験がきちんとできていればそれでいいじゃないかと考えるほうが合理的といえば合理的です。

 いずれにせよ、日本人にとっては、日本国内で試験を受け、それに合格しさえすればディプロマや学士号が取ることができるシステムはありがたいことです。

 もっとも、実際にディプロマや学士号を取ることは簡単なことではないですけれど…。