●私と英検1級

 英検1級。

 英語が好きな人なら誰もが憧れる資格でしょう。英語力をアピールする資格はほかにもたくさんありますが、日本において最も認知度が高いのはなんといっても英検1級です。

 ただ、英検1級は簡単には合格できません。なにを隠そう、私も合格するまで19回も受験しなければなりませんでした。19回もかかった原因は、私が受験を始めた頃には準1級がなく、2級合格後に狙う資格がいきなり1級だったため、実力もないのに受け続けていたからです。

 大学1年のときから連続で受け続けていましたが、私にとって英検1級は高嶺の花でした。最初の10回くらいは冗談半分に受けていたのですから、合格まで19回かかったといっても、本気で受験したのはせいぜいその半分です。

 1次に合格したのは14回目でしたが、2次の対策を一切せずに2次を受けたので2回連続で2次に失敗。なにしろ2次は20人の目の前で2分間の即興のパブリックスピーチをするのですが、いきなりそんなものができるわけがありません。2次試験に2度失敗した私は、英検1級とは一生縁がないものと観念しました。

 しかし、観念しきれなかった部分もあります。様々な人から「英検1級はもっているんですか」と訊かれても、「もっていません」と言わなければならないのがとてもつらかったです。

 時代は流れ、2次試験の方式が変わったことを知りました。即興のスピーチはそのままあるのですが、パブリックスピーチではなくなったのです。つまり試験官2名と受験生1名の3名だけで行われることになったわけです。
 
 気を取り直して受けたのですが、今度はなんと1次が不合格。そのときは本当にばかばかしくなってしまい、今度こそ一生受けるのは止めようと思いました。

 それからさらに数年が経ち、ふと英検1級の問題集を見ると出題傾向が変わっていました。それで「よし、これなら通る」と確信して1次を受けたのですが、わずかな点が足りず不合格。さらにもう一度受けたが、またまたわずかな点が足りずに不合格。

 もうこうなったら意地です。19回目の挑戦に挑んでみると1次は余裕で合格。2次試験もまったく準備をしていませんでしたが合格。かくして私の英検1級の挑戦は終わったのでした。

 考えてみれば、英検1級のために勉強したことはほとんどありませんでした。つまり、英検1級の問題集をやったり、2次のスピーチの練習をしたことはまったくなかったのです。唯一したことといえば英単語を覚えることくらいでした。こればかりは覚えるしかありませんから。

 では、英単語を覚える以外になにをしていたかといえば、ずっと英語を楽しんでいただけでした。遠い遠い回り道でしたが、英語を楽しんだ結果、合格できたのでした。勉強のしかたは人それぞれでしょうが、問題集ばかりやる勉強のしかただったら、私ならとっくの昔に英語嫌いになっていたことでしょう。