●「今、『○○』が売れてるじゃないですか」

 「今、『○○』って本が売れてるじゃないですか」

 編集者はよくこんなことを言います。本当に、あの人もこの人も、というくらい言うのです。

 きっと、毎日のように売上げランキングをチェックしているのでしょうね。

 編集者としては、今、どういう本が売れているかは最大の関心事でしょうし、ですから批判するつもりなどまったくありません。

 しかし、文筆家(特に翻訳家)にしてみれば、今、どういう本が売れているかなどほとんど関心のないことなのですね(もっとも、これは人によるかもしれませんけれど)。

 どういう本が売れているかに関しては、文筆家よりも一般の読者のほうが知っているかも知れません。

 私個人のことを言えば、いちいち、売上げランキングなどチェックしていませんし、書店にもあまり行きませんから、

「今、『○○』って本が売れてるじゃないですか」

 と、あたかも、それを知っているのが当たり前みたいな言い方をされても、

「そうなんですか」
 
 としか言えないのですね。

 編集者としては、ベストセラーを研究して、売れる要素が何なのかを探り、自分も売れる本を出したいのでしょう。

 ただ、それはそれとして、文筆家(特に翻訳家)は、いかに自分の作品を良くするかに最も関心があり、また、そうあるべきだとも思うのですよね。あくまで私見ですけれど。

 だから、常に売上げランキングをチェックしているという文筆家がいたら、私から言わせれば、ちょっと違和感を感じてしまいます。

 まあ、人気作家であれば、自分の本のランキングくらいは気にするかもしれませんけれど…。